朝日新聞全段広告
- beatni2009
- 8月22日
- 読了時間: 2分

プロダクションに勤め始めて3年目くらいの時。
デカイ仕事が舞い込んできた。
東京にある12の大学が連合で出す朝日新聞の全段(1ページ)広告だ。
「東京には12の故郷がある」というキャッチコピーの下
東京らしい風景ー都電をバックに女の子がカメラを見つめる内容だ。
これは相当鼻息荒く望んだのを覚えている。
勿論、モノクロフィルムでカメラはハッセル。(使いにくい。。。。)
新聞の全面であれば、当然35㎜ではなく中判フィルムとなる。
現場は明治通、遠くに池袋の高層ビルが見え、都電が真っ直ぐ向かってくる
ポイントでロケハンした。
ここで、外部のアートディレクターと一悶着あった。
彼のいうアングルではなく、僕が思うアングルを押し通した。
とにかく前のめりになっていて、全て自分の判断のもとにおきたかった。
後から考えたら、コンセプトをちゃんとカミ砕けば、彼の言ってることが
正解だったし、撮影したモデルの表情もコンセプトとずれていた。
またしても「ガキがイキってやらかした」典型だった。
ただ、入稿するまではそんな事は思いもせずにセレクトも
自分でしてプリントに出した。
印刷原稿はポジフィルムで撮るが、モノクロの場合ネガであるから、
プリント入稿になる。
今はもう無いが、原宿のナショナルフォートのプリンター技師と何度も
やりとりして、納得のプリントを仕上げてもらった。
新聞が出来上がった。何冊もいろんな場所で買い漁った。
得意満面、悦に入ってた自分だが、大分経ってからなんか違うかも
と気づき始めた。
僕の独りよがりが見えてきて、結局恥ずかしい成果物として残ってしまった。
だからこそ、今でも大切に保管している。
代理店の多くの営業マン、アートディレクターを始めとするデザイナーなどの制作マン、
プリントを何度も焼き直してくれる暗室のプロ達。
多くの人が関わり一つの制作物が出来上がる。
誰が欠けても出来上がらない。
カメラマンもその1人だ。ただ、圧倒的にその力が前面に出てしまうのが
写真家の仕事なので、多分恐怖からイキがっていたのだろうと思う。
全てをねじ伏せようとした自分の弱さが出たその成果物は、
年月が経ち、今は褪せて記憶とともに薄くなっている。




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