top of page
検索

朝日新聞全段広告


ree

プロダクションに勤め始めて3年目くらいの時。

デカイ仕事が舞い込んできた。

東京にある12の大学が連合で出す朝日新聞の全段(1ページ)広告だ。

「東京には12の故郷がある」というキャッチコピーの下

東京らしい風景ー都電をバックに女の子がカメラを見つめる内容だ。


これは相当鼻息荒く望んだのを覚えている。

勿論、モノクロフィルムでカメラはハッセル。(使いにくい。。。。)

新聞の全面であれば、当然35㎜ではなく中判フィルムとなる。


現場は明治通、遠くに池袋の高層ビルが見え、都電が真っ直ぐ向かってくる

ポイントでロケハンした。


ここで、外部のアートディレクターと一悶着あった。

彼のいうアングルではなく、僕が思うアングルを押し通した。


とにかく前のめりになっていて、全て自分の判断のもとにおきたかった。

後から考えたら、コンセプトをちゃんとカミ砕けば、彼の言ってることが

正解だったし、撮影したモデルの表情もコンセプトとずれていた。


またしても「ガキがイキってやらかした」典型だった。


ただ、入稿するまではそんな事は思いもせずにセレクトも

自分でしてプリントに出した。

印刷原稿はポジフィルムで撮るが、モノクロの場合ネガであるから、

プリント入稿になる。

今はもう無いが、原宿のナショナルフォートのプリンター技師と何度も

やりとりして、納得のプリントを仕上げてもらった。


新聞が出来上がった。何冊もいろんな場所で買い漁った。

得意満面、悦に入ってた自分だが、大分経ってからなんか違うかも

と気づき始めた。


僕の独りよがりが見えてきて、結局恥ずかしい成果物として残ってしまった。

だからこそ、今でも大切に保管している。


代理店の多くの営業マン、アートディレクターを始めとするデザイナーなどの制作マン、

プリントを何度も焼き直してくれる暗室のプロ達。

多くの人が関わり一つの制作物が出来上がる。

誰が欠けても出来上がらない。

カメラマンもその1人だ。ただ、圧倒的にその力が前面に出てしまうのが

写真家の仕事なので、多分恐怖からイキがっていたのだろうと思う。


全てをねじ伏せようとした自分の弱さが出たその成果物は、

年月が経ち、今は褪せて記憶とともに薄くなっている。


 
 
 

コメント


bottom of page