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怒り




師匠について2年が過ぎた頃

そこは200人程社員の居る広告代理店だった。クリエイティブルームという部署に師匠と

もう1人のカメラマン、もう1人のアシスタントが居た。

要するに一応会社員。

ただ、この部署だけは独立国家のようだった。

時はバブル真っ只中。

今の人は想像出来ないだろうが、

毎年50人以上の新入社員が入ってきて、大学出たての営業マンがアルマーニのスーツを着て闊歩していた。

僕の部署は別のビル。

夕方フィルムのあがりを取りに行くのだが、本社の中はそれはそれは煌びやかで、

バブリーねーちゃんとアルマーニ野郎が大声でお疲れ様です!!と叫ぶ。

破れたジーパンにそこらじゅうガムテープやパーマセルテープを貼った汚い僕は

いつもそそくさと逃げ帰っていたのを思い出す。

そんな本社の営業に年が同じ、同期のアキラがいた。

不思議と彼とは気が合いたまに話をしていた。アシスタントもシンドイが営業もシンドイ。

あの頃のCMで(24時間闘えますか?)という精力剤の広告がある。バブル期はそんな気運が高まりまくっていた。

週末になると本社にクライアントが来る。接待だ。

アキラも当然同行する。

行くのは歌舞伎町の韓国の店。

気に入った女の子を連れ出して

一晩過ごせるシステムだ。

ある土砂降りの日。

アキラはクライアントと女の子に傘を差し自分は、ずぶ濡れのままホテルまで同行し、

入り口で深々とお辞儀をする。

その瞬間、プツンと何かが切れたのだろう。

翌日営業車を本社ビルの駐車場に入れる際、フルスロットルで突っ込みタワーパーキングをメチャクチャに破壊した。

その足で社長室に行き辞表を叩きつけた。

僕は苦笑いして「お前ビッグになるよ」。。

そして彼は若くして会社を立ち上げた。


怒りだよ。


ありとあらゆる理不尽に僕たちはいつも怒りを押し殺していた。

清く正しい感情は、か細い。

反対に負のパワーは前に進む最高の糧になる。

僕らの20代は怒りに満ち溢れていた。

 
 
 

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